2010年5月1日土曜日
アイ・ガット・ア・ウーマン
アイ・ガット・ア・ウーマン
「そのままでいいんだよ」と言ってくれる歌だ。
「よし、いくぞ!」よりも速いひとこと。
"Wool"------パンクスたちが叫んだ”Fuck You"よりも強い痛快な一撃。20年の屈折。憂鬱と閉塞感が大気中に解放される。シャンペンの栓を抜く音。弾ける声。ブルースの進撃。ハードロックが粉々になる声。どこまでも転がって行く声。楽器になった声がバウンドしている音。歓喜するしかないレコードだ。
呼吸がリズムを刻む。心臓がうねっている。喜んでいる息。誰かのために歌っているわけじゃないことが分かる呼吸。呼吸が頬笑んでいる。自分のための歌。それが嬉しいのは、身体も精神も自分のためにあるんだと、教えてくれるからだ。
アイ・ガット・ア・ウーマン。最初にして、最期にして、最強の言葉「フリーダム!」がスカートの下に隠されている。10時間かけて探している夜と朝。ボリュームを上げる。最初の音の重要性はいまも同じだ、「よし、いくぞ!」はロックンロールであるための約束だ。聴くもののテンションを最大限に引き上げ、一気に解放し、共振するためには、全身全霊を引き付けるサウンドでなければならない。
エルヴィスはそれを最初に、しかも肉声で、唐突にやってのけた。装置らしいものがなかった時代、螺旋階段で歌うことでエコー効果も引き出した。それがロックンロールの最初の出発点だった、
ロックンロールの幸福。エルヴィス・プレスリーの真髄。ビル・ブラックの真髄。スコティ・ムーアの真髄。すべてがひとつになって動いている。「少年たち」の背骨がひとつになったフックだらけの演奏。変幻自在、声の音色は恍惚へ誘う。誠実なダンスに歓喜しよう。ギターリフと一緒に歌おう。歌いながら転がっていけ。自由の在りかを探すのだ。
スカートの下では飽き足らない自分さがし。日常の壁を突き破り、未知に向かって進むロックンロールという名の乗り物に乗った聖なる旅。
楽しい声。誰でも自由に飛び入りできる旅、若者、そして少年少女は塩化ビニールを手に旅に出た。
のろけ話をくり返し聴こうではないか。
あんまり嬉しそうにはしゃぐから、いつまでも聴こうじゃないか。
♪ 俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘さ
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘さ
朝、必要な時にここにいてくれる
親友みたいな存在さ、
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ
明け方から愛をささやくのさ、俺だけにね
明け方から愛をささやくのさ、俺だけにね
俺だけに愛をささやくく彼女
とってもやさしく愛してくれる
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ
朝から晩まで愛し合う
ケン力なんかしやしない
他の男には目もくれず
俺に淋しい思いもさせないで
女は家にいるのが一番と
わきまえてる娘なのさ
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ
彼女は俺の女で俺も彼女の女さ
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ
知らないのかい、すごくいい娘なんだぜ
知らないのかい、すごくいい娘なんだぜ
俺の可愛い女は町外れに住んでいる
大人たちは「不謹慎」「悪魔」のラベルを貼った。企ては成功したが、その光景を見ていたこどもたちはエルヴィスの軍服の下の身体にあったものを受け継いだ。
アイ・ガット・ア・ウーマン。その身体が縦横無尽、奔放に動いていて眩しい。
エルヴィス・プレスリーがモーゼの再来に見えたとしても決して不思議ではない。革命の旗手として先頭に立って、理性よりも確かな身体に真実を掲げて突き進んだのだから。
しかしーーーもしこのレコードを聴かない理由が不特定多数の「愛されすぎることへの嫌悪」だとしたら、「神のように崇められていることへの苛立ち」だとしたら、間違った選択だ。それらはエルヴィス・プレスリーとは何の関係もないことだと言える。
自分のままでいいことを知ったエルヴィスはただ御機嫌だっただけだ。それを伝えたかっただけだ。どうしてこんなふうに歌えるのか、それを考えてみるだけでも、聴く価値はあるし、人生を楽しむという点において間違いなく貢献するだろう。こんなふうに歌える者はいないのだから。
Woll,I got a woman way cross town
She's good to me, oh yeah
Say I got a woman way cross town
She's good to me, oh yeah
She's here in the morning whenever you need
Yeah, she's a kind of friend indeed l got a woman vvay cross town
She's good to me, oh yeah She says she loves me early in the morning
Just for me She says she loves me early in the morning
Just for me Oh yeah, she says she loves me just for me
Oh yeah, you know she loves me so tenderly
l've got a woman way cross town
She's good to me, oh yeah
She's there to love me both day and night
No groans or fusses, just treats me right
Never running in the streets Leaving me alone
She knows a woman's place Is right there at home
Well I got a woman way cross town She's good to me, oh yeah
Well I got a woman way cross town
She's good to me, oh yeah Well, she's my baby, don't you understand
<アイ・ガット・ア・ウーマン>はレイ・チャールズの作品。エルヴィスの<アイ・ガット・ア・ウーマン>はRCA移籍、初のアルバム「エルヴィス・プレスリー登場」に収録された。アルバムは記録破りの大ヒット。お金のないティーンエージャーのために全曲シングルカットされた。
画像の<アイ・ガット・ア・ウーマン>シングル盤(日本国内盤)は1964年に再販されたときのもの。
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